立海(幸攻)小説

□いつもと違う姿にドキドキ
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「…幸村、部長?」



部室のドアを開けると、幸村部長が机に向かって部誌を書いている。

ただ、一目で見て分かった

…いつもと違うとこ。



「あ、赤也」



幸村部長は俺の名前を呼んで、ふふっと笑う。



「どうしたんですか、それ…」

「あ、うん?似合わない?」



俺の質問にも、部長はまったく動じない。

…動じているのは質問した俺の方で。



「や、すっっごい似合ってます!」



なんて直ぐさま部長からの質問に答えてしまう。

幸村部長はまた、ふふっと笑って



「そっかーありがと」



と言った。

その場を、ほわんとした空気が包み込む。

俺も部長を見て、微笑み返して…

一瞬にして自分が何を部長に言いたいかを思い出した。



「…じゃなくて!なんで二つ結びなんてしてるんですか!」



そう、幸村部長は少し長めの髪をちょこんと二つに結んで

特にそれを気にすることも無く部誌を書いていたのだ。



「なんか、仁王がやっていったんだ。取るのももったいない気がして」

「それ、誰が見たんですか」

「えーと、仁王と柳生と、蓮二かな?」



部長は二つに結ばれた髪を触り、首を傾げる。

その姿がとっっても可愛くて、もっと見ていたい衝動に駆られるけど…


俺は机に向かう幸村部長の傍に足を進めた。

そして部長の目の前に立つ。

部長は机に向かっていた体の向きを直し、俺に向けて手を差し出した。



「…だめ…」

「ん?」



俺は部長をキッと睨み、差し出された手を握る。



「…だめです!」

「な、なにが?」



握った手に力を入れると、部長が驚いたようだった。

…なんか、目が熱い。



「そんな可愛いの俺以外に見せたら駄目っス!!」

「わっ」



俺は言いたい事をとりあえずぶつけて

幸村部長に勢い良く抱きついた。



「〜〜〜〜っ」



いつの間にか俺の目には涙が溜まっていた。

これ以上喋るとその涙が溢れ出しそうで

俺は自分の顔を部長の胸に押し付ける。

そんな俺の様子を黙って見ていた幸村部長は

俺の頭を優しく撫でた。



「…ふふ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ、赤也」



部長は俺の髪に顔を寄せ

俺が落ち着くように、少し低めの声で囁く。



「だって…唯でさえ格好良いのに、もっといっぱい、幸村部長人気になっちゃうでしょ…」



俺がそう言って顔を上げると

ふっと触れるだけのキスをされた。



「大丈夫だよ、俺は赤也だけだから」



格好良くて可愛くて、誰にでも優しいこの人をちょっと憎みながらも

やっぱり大好きなんだな、と思う。



だってさっきまで怒ってた俺の心も

抱きしめられてキスされて、こんなにもドキドキしてるんだからさ。



end.



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