青学リョ小説
□大好きだから
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「寒くない?越前」
河村先輩は優しい。
「うん、大丈夫っス」
「良かった。寒かったら言ってね。ほら、マフラーもあるし」
どこまでも優しい。
「…あのさ、越前…もしかして聞いちゃいけないことなのかも知れないけど…最近何かあったの?元気…ないよね」
優しいから人の変化に敏感で。
優しいから自分の事には鈍感で。
「先輩は…卒業したら俺の事嫌いになっちゃいますか?」
だから逆に不安になるの。
優しすぎて、その優しさに甘えて。
「…え…え?」
先輩が卒業するまであと少し。
俺、先輩が居なくなったらどうすれば良いの?
「だって先輩は高校入ったらテニスやめちゃうから…一緒に居れる時間減るし、会える時間だって減るでしょ?」
もっと一緒に居たいの。
もっと一緒にテニスがしたい。
「俺、ただでさえワガママだし…」
先輩の優しさに甘えてるの。
これからも甘えたい。
「今は校舎も一緒だし部活も一緒だから安心だけど…さ…高校にも女の先輩いっぱい居るし…」
他の人なんか見ないで。
俺だけ見てて。
俺、あんたが好きなの。どうしようもないの。
俺を置いていかないで。
「越前…」
急に視界が真っ黒になる。
先輩の胸の中。
「俺の事で悩んでたの…?」
河村先輩は優しい。
表情も、声も、体温も。
「…ごめんね…でも凄い嬉しい…」
どこまでも優しい。
表情も、声も、体温も、考え方も。
「俺も、リョーマと校舎が離れるなんて安心できないよ。リョーマは人気者だから…」
河村先輩だって優しくて人気者だよ。
「たしかにテニスは辞めちゃうし、高校にも女の子は沢山居るけど…俺はリョーマが好きだから…」
俺だって河村先輩だけ。
俺も先輩が好き。
「だから、安心して?時間が空いたらすぐにリョーマに会いに行くよ」
「…ワガママはヤじゃないの?」
「リョーマのワガママなら可愛くてなんでも聞いちゃうよ」
「じゃあ…ずっと俺だけを好きでいてね」
「…もちろん」
「ずっとだよ?」
「うん…大好きだよ」
河村先輩は優しい。
どこまでも優しい。
優しいから人の変化に敏感で。
優しいから自分の事には鈍感で。
だから俺が教えてあげるね。
先輩のそんな優しさが好きだから。
だから俺にも教えてね。
先輩の沢山の優しさを。
ずっとずっと、俺だけに。
end.