青学リョ小説
□HAPPYBIRTHDAY TO…
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「乾先輩、お願いがあるんスけど…」
そう言ってきたのは可愛い…愛しの一年ルーキー。
HAPPY BIRTH DAY TO・・・
「聞けるか聞けないかわからないが…とりあえず聞こうか」
本当は。
越前はお願いなんて滅多にするヤツではないし、ましてや想い人のお願いだ。
どんなことをしても叶えてやりたいところだが。
先輩のメンツ、と言うかなんと言うか。
この想いに越前は気付いていないから。
「で、どうしたんだ?」
「データを教えてほしいんだけど…」
データのことなら役に立てそうだな。
「何に関する?」
越前のことだから対戦相手のデータは聞かないだろう。
そういうものも含めて試合するのが好きなヤツだから。
「…先輩の」
先輩…と言っても沢山居すぎてわからない。
まぁ、うちのレギュラーであることは確かだな。
「先輩と言っても沢山居るぞ?」
そう越前に問い掛ける。
「あんたのだっ」
…
「…俺のか?」
いや、まさか俺のデータを聞くとは思わなかった。
まだまだデータ分析がなってないな。
それにしても、俺のことを聞いてどうする気だ?
「そう!乾先輩の!」
怒る越前も可愛いと思うのはどうなんだろう。
これは末期かな。
「まぁ、別に良いが…」
「ホント?じゃあ、好きな食物は?」
「なんでも好きだよ」
「…じゃあ、趣味は?」
「データ収集」
「今欲しいものは?」
「越前のデータ…と愛、とでも言っておこうかな」
嘘ではないが。
わざと冗談ぽく言ってみる。
「…なにそれ…乾先輩も、そんなこと言うんスね」
越前は、へんなの、と言って笑いだす。
怒ってる顔も笑ってる顔も。
愛だけじゃなく越前の全てが欲しい。
「じゃあ最後。好きなタイプは?」
お前だ。
と言いたい気持ちを押さえて。
「落ち着いた、年上の女性…かな」
と答える。
越前は、ふーん…と言った後
「ありがとうございました。じゃっ」
と言って走っていった。
さっきの質問は皆にしているのか、俺だけなのか。
心の中で走り去る背中に質問を投げかけた。
*****
「乾、誕生日おめでとう!!」
今日は俺の誕生日。
練習が終わった後、レギュラーが部室に待機していてサプライズパーティーを開いてくれた。
表情には出さないが、こういうのは嬉しいものだな。
…越前も居るし。
皆でケーキを食べて、プレゼントを貰って。
楽しい時間も終わり、校舎を後にする時間。
レギュラーとも別れ、一人で家に向おうとした時
「乾先輩」
と、越前に呼び止められた。
「どうした?」
「はい、コレ」
差し出されたのは封筒。
「越前、これは…?」
「ハッピーバースデー乾先輩!俺がいなくなってから見てね。じゃ!」
急いで言うと、リョーマは遠くで待つ桃城の所へ走っていく。
越前が桃城の所に着き、自転車の後ろに乗る。
二人の姿が見えなくなったと同時に、俺は越前からもらった封筒を開けてみた。
中には一枚の手紙が入っている。
『HAPPY BIRTH DAY乾先輩。
落ち着いてないし年上でもないけど、愛が欲しくなったら連絡ください。
俺のデータは…
先輩が調べてよね』
そう書いた下には携帯の番号とメールアドレス。
これは…どうすれば良いんだろう。
そういえば明日は部活が休みだ。
これはもう、十分な理由になる?
『越前へ。明日は空いているか?テニスの練習をしたいのだが、付き合ってもらえないだろうか。乾』
メールを送信する。
手が、震えた。
自分らしくない、とそんな自分を笑い、此処まで人を引き付ける越前の事を思う。
携帯が鳴った。
『そのつもりでした。じゃあ、明日。迎えにきてもらえたら、遅刻はしないっすよ』
あぁ、最高の誕生日プレゼントだ。
end.