青学リョ小説

□名前で呼んで
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「ねぇ、名前で呼んでよ」


最近リョーマから良く聞くコトバ。


「…無理」


最近オレが良く言うコトバ。


「なんで」

「…恥ずかしいから」


最近こんなやり取りをよくやる。
リョーマはオレが出来ないと思ってて言ってるんだ。

だから今日も、からかう程度で終わるだろう。


「呼んでくれるまで喋んない」


これもいつも言われてる。
だからいつものように黙っている。


「…」

「…」

「やっぱり無理だよ越前…」


いつもと同じ。
いつも此処で謝って。
それからリョーマはため息をついて。


”秀一郎のバカ”


と言う。
そして普通に生活を始めるんだ。


「…」


越前は何も言わずに部室を出て行く。


「ちょ、越前…!?」


普段は取らない行動で。
…オレはどうも対処できない。

そんなオレを見て。

英二が大きくため息をついた。



−−−−−



「越前ナイス!」

「おい〜越前っ!!オレの顔ばっか狙うなっ!!」

「うっさい桃先輩」


部活が始まり。
ストレッチも終わってレギュラー陣がそれぞれコートで打ち合いを始めた。


「リョーマくん、せっかく調子良さそうなのに…機嫌悪いね」

「あぁ、悪いな」

「うん、悪いね」


1年生3人組がそろって越前の状態を口にする。
それを1番わかっているのは自分なのに。
原因も、その機嫌を直せるのも自分だと解っているのに。

不甲斐ない。


「それは大石がねぇ〜…」


英二が1年生に越前の機嫌が悪い理由を説明しようとする。


「ちょ、英二!余計なこと言うなっ!」

「だってオレならおちびが望むことしてあげる」

「…」


今まで笑顔だった英二が突然声色を変えた。
それは英二が本気で怒っているとき。
英二の事は手に取るようにわかるのに…


「…大石!こうすれぱ良いんじゃにゃい?」

「…?」


英二は仕方ないな〜と嘆きながら、俺に耳打ちする。
その内容は、どうやったら名前で呼べるかというもので。



「早く早く!ほら、オチビ〜!ナイスっ♪」

「…む、無理だよ英二…!」

「おーいしっ!」


英二に背中をどんっと叩かれ。
誰かに喝を入れてもらわないと行動を起こせないなんて…

でもそれは自分にとっては良いチャンス

こんな自分を変えないと

リョーマはもっと怒って 悲しむ。


俺は息を大きく吸い

腹をくくった。



「…ナイスっ!リョーマ!」



思ったよりも大きな声が出てしまい。

近くに居た英二も一年生も。

ストレッチをしていたテニス部員も。

試合をしていたレギュラー陣も。

リョーマも


一斉に振り返る。




「…え?」




皆があっけにとられている中、名前を呼ばれたリョーマが一番に反応を返す。




「…」


「…」




いや、リョーマにだけ聞こえればよかったんだけど…!

一斉に皆の視線を受け、皆に大きな声を聞かれた事


リョーマと呼んでしまった事が恥ずかしくて。


俺もリョーマも何も言えなくて。


そんな俺たちを見てレギュラー陣が笑い出す。



「大石もオチビも顔まっかぁ〜!」

「う、うううるさいぞっ英二っ!」

「大石先輩…!!!あはははは!!!」

「っ桃!笑うな!!!」

「大石があんなに声が出るなんてね、データにはなかったな」

「びっくりした〜」

「…乾…タカさん…ちょ、海堂!お前笑ってるな?!」


俺をからかうレギュラー陣を無視して


「…大石先輩!もう一回!」


越前は俺にぶつかる勢いで駆け寄ってきた。


「む、無理!」


そんな様子を見ながら大笑いするレギュラー陣。


「じゃあっ、また上手くボール返せたら言ってくれる!?」


越前の目はキラキラしている。

その顔は絶対に壊したくなくて
本当に愛おしくて

期待を裏切れないな…と


「…努力する…」

「頑張るから!絶対だよ!」


越前は本当に嬉しそうな笑顔を浮かべ、桃城が待つコートに走る。


越前は、ボールを返すと言ったら返すだろう。

そのときはもっと優しく、リョーマだけに聞こえるように…



相変わらず、レギュラー陣は大笑いしていた。





「んにゃ〜オチビのあんな笑顔はじめて見た…なんだよ大石の奴…言わすんじゃなかった〜!」



end.



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