青学リョ小説
□背中の温もり
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「もぉ…大丈夫だって言ってんのに」
「病人をほっとくわけにはいかないだろ?」
「だからって…おんぶしなくても良いジャン…」
リョーマは朝から調子が良くなかった。
それでも部活に出たかったからその事を誰にも伝えていなかったのに。
部活の出欠確認の時に乾に一発で見破られ、保健室に連れて行かれ。
リョーマが熱がある事を、乾が手塚に伝えてしまった。
手塚から出た言葉は「帰って休め」の一言。
だから今こうして強制送還されているわけである。
何故乾がリョーマを送っているのかはレギュラー陣全員が知っていた。
” リョーマと乾は恋人同士だから ”
それは認めたくない事実であったが、如何せん事実である。
いつもはリョーマを取り合うレギュラー陣も、こういう時は乾に負けてしまうのだ。
「嫌か?」
「恥ずかしい」
リョーマは乾の背中に顔をうずめる。
「じゃあ嫌ではないんだな」
「…っ」
恥ずかしいけど嫌じゃない。
それは当たっているが、こう言い当てられるとなんとも悔しいもので。
リョーマは乾の背中をバシバシ叩く。
「痛い痛い、リョーマ!」
「…その余裕ムカツク…」
「まぁまぁ、病人は大人しくおんぶされてなさい」
「うー…」
乾先輩の背中…あったかい…
リョーマは調子が悪いのと、乾の背中の温かさに軽い眠気を覚えた。
起きていて恥ずかしい思いをするなら、寝てしまえば良い。
寝てしまえば恥ずかしさなんて感じないから。
乾に背負われるのも心地良く感じる。
リョーマはその眠気に身を任せた。
「…リョーマ?…寝たのか?」
…いつまでもこの可愛い恋人を守っていけたらどんなに幸せだろう。
君はいつか世界に羽ばたいていくけれど。
それまではどうか…君を守る事を許して欲しい。
願わくば…それ以降も。
「乾先輩」
すっかり寝ていたと思っていたリョーマが突然乾の名を呼んだ。
「…起きてたのか」
「大好きだよ」
「…なんだ急に…」
「これからもずっと一緒に居てね」
こいつはエスパーか…
いつもデータの上を行くリョーマ。
自分の考えが見透かされているようで気恥ずかしい。
「…こちらこそ」
「よし」
リョーマは満足したのか、また眠り始める。
いつまでもこの可愛い恋人を守っていけたらどんなに幸せだろう。
いや
いつまでも守っていくよ、リョーマ
end.