青学リョ小説A

□ゴールデンペア
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「おーい越前、帰るぞー?」

「ちょっと待って!」



オチビは急いでテニスバッグにジャージを詰めて、桃の自転車の後ろに乗る。

そんなオチビに桃が一言声を掛けて。


オチビは嬉しそうに笑う。



「…英二?」



ジャージを脱ぎかけでボーっと外を見ていた俺を心配したのか、大石が声を掛けてきた。



「どうした?ジャージ脱ぎかけで…」

「オチビってさ、桃と居る時良く笑うよね」



急すぎて話が読めず、大石は目を丸くする。

でも伊達にゴールデンペアと呼ばれてるわけじゃなくて。


大石は小さく笑った。



「…ホントに越前の事好きなんだな」

「うんっ!」



大石もリョーマに心惹かれていたけれど。

相方のこの嬉しそうな笑顔を見たら応援せずには居られなかった。



「…オチビ、桃のこと好きなのかな」



自分でも、情け無い顔してるって分ってる。

分ってるけど

オチビの事になるとどうしても情け無い自分の方が割合が多くなっちゃうんだ。



「英二の事も好きだと思うよ」



すかさず、大石のフォロー。

このフォローに何度、助けられたか分らない。


その時の俺に、必要な言葉をくれる。



「でも大石の事も好きだと思うにゃー」



大石は小さく笑って、着替えを再開する。

俺も早く着替えなきゃ。


オチビは、結構わけ隔てなく皆の事が好きなんだと思う。

生意気だし、勝気だし

人を寄せ付けないオーラを放っているけれど。

手塚の事も、不二の事も、皆大好きで。


…もちろん同性の俺がオチビの中の一番になれるなんて、思ってないよ。


でも、テニス部の中では一番になりたい。


そう思って、スキンシップも会話も、他の人よりは遥かにしてると思うんだけど…

その想いはまったく通じて無いみたいなんだよね。



「エージ先輩、ちょっとどけてくれます?」

「あぁ、ごめんごめん…って、オチビ!?帰ったんじゃにゃいの!?」



ソコにはさっき帰ったと思っていたオチビの姿。



「途中まで桃先輩に乗せて貰ってたんだけど忘れ物しちゃって…サイアク」



そう言って、オチビは拗ねた顔をする。

それが凄く可愛くて、俺は笑ってしまった。



「あ、何笑ってんスか…あーあ、折角マック奢ってもらおうと思ってたのに」



…こんなチャンス、滅多にないんじゃないだろうか。

此処で行動しなくて、いつ行動するというんだろうか。


俺は頭をフル回転させて、オチビと一緒に変える口実を考える。



「…そんじゃさ、俺と一緒に帰る?マック奢ってやるよん」



どうしよう、凄く、どきどきしてる。

早く返事してくれないと心臓飛び出るかも…!

俺の心配そうな表情とは裏腹に

オチビの顔はすぐに笑顔を浮かべた。



「マジっスか?帰る帰る!…あ、副部長は?」

「あぁ、俺はちょっと寄るところがあるから。二人で行っておいで」



急に話を振られた大石は少しビックリした素振りを見せた。

…用事なんて無いくせに

オチビに『ごめんな』と謝っている。



「エージ先輩!早く!」



オチビは余程お腹が空いているのか

自分のロッカーから”忘れ物”を取り出しバッグに入れて

着替え終わった俺を急かした。



「おう!」



俺は急いでジャージをバッグに詰めて

既に部室を出て行ったオチビを追いかける。



「…大石、サンキュ♪」



大石は俺の方を見て嬉しそうに手をヒラヒラ振っていた。



end.



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