氷帝小説
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「宍戸先輩!先にコート入って待ってますね」
「ん、わかった」
此処は氷帝学園テニス部正レギュラー専用の部室。
200人の部員の上に立つ、正レギュラーのみが入ることを許される神聖な場所。
勝ち進む力のある者だけが入る資格を持つ。
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「あー…激ダサ…」
俺、宍戸亮はその資格を失った。
関東大会予選。
正レギュラーから試合に出たのは俺だけだった。
相手は不動峰部長。
その試合、俺は負けた。
いくらそれまでの正レギュラーであった滝を倒したからといって。
負けは負け、敗者は敗者。
俺は正レギュラーの座から落とされた。
「…先輩、今日はもう終わりにしませんか…?」
「まだだ!お前のスカットサーブを打ち返すまで、今日は止めない」
「でも先輩怪我…」
「…長太郎、早く打て」
正レギュラーと言う今まで揺るがなかった地位から一瞬にしてどん底まで落とされたその日から。
俺は毎日特訓を続けた。
長太郎の200キロ近いサーブを毎日うけて。
今まで自分にこんなに厳しくしたことはないっていうくらい。
俺は毎日時間がある限りテニスを続けた。
−−−−−
「…宍戸先輩?どうかしたんですか?」
「う…わ、びびった…」
「あ、ごめんなさい…遅いなーと思って…戻ってきちゃいました」
そして今。
俺はこうして正レギュラーの地位に立っている。
「よし、コート行くか」
「はいっ」
「そういえば今日、跡部先輩が…」
なぁ長太郎。
俺がレギュラー落ちしていた期間、お前は何を考えてた?
俺は自分以外に意識を向ける余裕もなくて。
お前はあの時の俺を見て、何を思った?
「…んぱい、宍戸先輩!話聞いてましたか?」
「…あ?わりぃ聞いてなかった」
「酷い…まぁ良いですけどー…」
「すねんなよ、今日帰りに飲み物奢ってやる」
「えー飲み物だけですか??食べ物は?」
「贅沢言うな」
あの時は夢中で気づかなかったけど。
お前が居なきゃ無理だった。お前が居たから頑張れた。
今は…そう思う。
「おい宍戸、鳳」
「…跡部」
「どうしたんですか?跡部先輩」
「お前らには次の青学戦、ダブルスで出てもらう。これからの練習メニューもダブルスに切り替えだ」
「…わかった」
「はいっ」
「宍戸に話がある。…鳳、先にコートに入って練習始めてろ」
「はいっ宍戸先輩、先に行ってますね」
「おう」
「…相変わらずだな」
「あ?何がだよ」
「鳳だよ…まぁ良い。今回のダブルスだが、監督と俺で決めた」
「…だろうな」
「本来ならお前をシングルスで使おうと思っていたんだが…」
「?」
「お前がレギュラー落ちしたときの鳳を見てお前とダブルスを組ませることに決めた」
「…」
「詳しくは鳳にでも聞けよ。それだけだ」
−−−−−
宍戸先輩がレギュラー落ちした後。
俺を頼ってくれて凄く嬉しかった。
自分のことでいっぱいいっぱいであったであろう時期に。
俺のことを一番に思い浮かべてくれて。
宍戸先輩はクールで熱くならない人だと思ってた。
特訓に付き合うまで。
でも実は凄く熱くてテニスのことを一番に考えてる。
怪我をしてボロボロの姿を見て思ったんだ。
この人の為に頑張ろうって。
−−−−−
「長太郎、初ダブルス、やるぞ」
「はいっ」
「…」
「宍戸先輩?」
「よく聞け長太郎。
…俺は特訓で俺のすべてをお前に見せた。
ダセェとこもかっこ悪いとこも弱えぇとこも、全部だ。
お前に見せてねぇ俺は無い。
もう俺は二度と負けない。お前にも負けを味合わせない。
約束する。
だから…付いて来い」
「…はいっ」
「おーい宍戸ー鳳ー!はやくやろーぜー!!」
「あんま遅いとボールもらってまうでー」
「行くぜ長太郎!」
「絶対勝ちましょうね、宍戸先輩!」
さぁ
ゲームスタートだ。
end.