他校リョ小説
□ONLY ME
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ねぇリョーマくん。
なんでそんなに、誰からも好かれちゃうんですか?
猫みたいにそっけないのに…
たまに見せる、自信たっぷりのその笑みで。
僕のことだけ見て、僕だけにやさしくして。
他の人なんか見ないで、僕だけをかまって…
ONLY ME
『ねぇ』
『あのっ』
下校途中、二人の声がハモる。
「チョタからどーぞ」
「えっいえリョーマく「いいから」」
まだ全てを言いおわらないうちに言葉を遮られ、長太郎はリョーマの機嫌が悪いことを思い出した。
恋人は昨日から機嫌が悪い。
昨日は青学・氷帝テニス部共に部活が休みであったため。リョーマと休日を過ごしたい両校レギュラー人達は、
「俺とまた勝負をしないか」
「俺様と試合したくねぇのか?」
「もちろん僕とも試合、するよね」
等色々な理由(脅しとも言う)を付けてリョーマを屋外テニスコートに誘い、上手くリョーマと共に休日を過ごしたのである。
ただ誘われた当の本人は、最初の方こそ機嫌が良かったものの帰る頃には機嫌が悪くなっていた。
長太郎はその理由がわからず、一緒に帰った時のピリピリとした空気にただただ焦り、話した内容もあまり覚えていない。
だが長太郎の機嫌もあまり良くなかった。
機嫌が良くないと言うより、どうしてもモチベーションがあがらないのだ。
「えっと…あの…リョーマくんは皆に好かれてますよね。」
こんなことを言って呆れられたらどうしよう。
こんなことを言って嫌われたらどうしよう。
ただでさえ機嫌が悪いのに。
もちろん恋人が皆に好かれてるのは十重承知の上であり、その上で付き合っているのだが。
昨日テニスコートで見た彼の…他の人に対する笑顔。
あの笑顔を見てどうしても不安になり、そして引き付けられた。
「胸が…苦しくなるんです。リョーマ君が他の人に笑いかけてると。」
一度口にしてしまうともう止まらなくて。
長太郎はぽつぽつと喋りだす。
「昨日…思ったんです。
何で僕があそこに居ないんだろうって…何で僕だけじゃないのかとか…っ」
気付いたら目から涙がこぼれていた。
だが今はそんなことを気にかけている余裕は無い。
「束縛しちゃいけないし、これが独占欲って事もわかってるんです」
2人ともいつの間にか立ち止まり、リョーマは長太郎の顔をじっと見つめている。
「でも…他の人なんて見ないでほしい…僕だけを見て欲しくて…」
長太郎はその場にしゃがみ込んだ。
中学生にもなってみっともないとは分かっている。
でも。
涙が止まらない。
リョーマは付き合いはじめる前、束縛されるのが嫌いと言っていたのに。
長太郎はリョーマの返答が聞きたくなかった。
考えられるリョーマの返答、それは…
「なーんだ、そんな事か」
長太郎は自分の耳を疑った。
リョーマからの返答は拒絶の言葉かと思っていたから。
長太郎はしゃがみ込んだまま、リョーマを見上げた。
リョーマはゆっくりと長太郎の頭に手を伸ばし、喋りはじめる。
「ねぇ長太郎?二度と言わないから良く聞いて。
長太郎は俺のもの。誰にも渡さないし、誰にも渡す気は無い。
…で、俺は長太郎だけのものだから…泣かないで」
言い終わるとリョーマは長太郎の頭を撫でてやった。
長太郎はリョーマの言葉が嬉しくて涙が止まらず、うなづく事しかできない。
愛する人の言葉はコレほどまでに心に響くのか。
「ちょっとチョタ?泣きやんでよ!泣きやむと思って言ったのに!」
リョーマは長太郎の頭を撫でながら、泣きやむようにと長太郎の目尻にキスをした。
「…嫌われるかとおもっ…て…」
安心した。
頭を撫でてくれている小さな手の感触に心地よさを覚えながら、長太郎は落ち着きを取り戻す。
多分自分は今、とても酷い顔をしている。
そんな自分の涙を拭いてくれ、安心させてくれる恋人。
とても愛しかった。
「そんなわけないでしょ、俺はチョタが好きなんだから…さ」
リョーマがボソッと呟いた言葉に、落ち着きを取り戻していた長太郎はまた泣きそうになる。
あぁ、この子を好きで良かった、と。
これからもずっと好きなんだろうな、と。
不安になる事もまだまだあるかも知れない。
でも、泣いてしまう自分の世話を甲斐甲斐しく焼いてくれるのなら…
それもまた良いかもしれない…と。
「はい、チョタ。帰ろ?」
差し出された手を取り、2人は歩き始めた。
*****
おまけ
「そういえばリョーマくんが言いたかった事って??」
「…忘れた」
「間がうそっぽいΣΣ」
end.