他校リョ小説

□HAPPYBIRTHDAY TO…
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「リョーマ!」


青春学園正門前

此処がオレとリョーマの待ち合わせ場所。


「岳人」


オレの姿を確認して、リョーマが正門に向かって走る。


「ごめん、待った?」

「いーや、今着いたトコ。つーかお前、傘持ってねーの?」


今日の天気は雨。
校門からは色とりどりの傘を持った生徒が下校している。


「朝寝坊して…急いで家出てきたから忘れた」

「あ…そ。ちょっと傘持ってて、拭いてやるから」


リョーマは大人しく傘を受け取り


「今日はどうする?」

「お腹空いた」

「じゃあマック行くか〜。リョーマ傘持って無いなら家まで送っていくだろ〜…早めに帰らないとな」


こんな会話をしながら。
オレはリョーマの髪をわしゃわしゃとタオルで拭いてやる。


「今日泊まっちゃだめ?」


初めは聞き間違いだと思った。
雨の音がうるさくて。


「え?なんつった?」


だからもう一度聞き返す。


「だから、今日岳人の家に泊まっちゃだめ?」


聞き間違いではなかった。
明らかに動揺してしまう、嬉しくて。

だって今日は


「明日も学校だろ?大丈夫なのかよ〜」

「岳人が起こしてくれて、岳人が送ってくれれば大丈夫」


リョーマはそういって微笑む。
この笑顔には逆らえない。


「ん、わかった。じゃ、夜ご飯食べて帰るか」

「あとね、ゲーセンに行きたい!」

「ゲーセン?リョーマがゲーセン行きたいっていうの珍しいな。なんかあんの?」


リョーマは曖昧に笑顔を浮かべながら。
オレはリョーマが雨に濡れないように細心の注意を払いながら。

目的地へと向かい始めた。



−−−−−



「けっこう新しいゲーム入ってたな〜!」


しばらく部活が忙しくてゲーセンに来てなかった。
その間に新しいゲームなどが導入されていたらしく、今日はそれを全部制覇した。


「んー楽しかった!そろそろ帰るか!」


新しいゲームを全部制覇できた事でテンションが上がっていたオレは上機嫌でリョーマに声をかける。


「…」


リョーマはきょろきょろ周りを見渡して。
何かを見つけたのかオレの腕をひっぱりながらその方向へ向かう。


「な、なんだよ?」

「プリクラ撮ろう?」

「おう!良いぜー」


上機嫌なオレは何も考えずにリョーマの提案を許可。
プリクラなんていつ撮ったっけ?そういえば最後に撮ったのって侑士とじゃなかったか?うげー
など考えている間にあと5秒で撮影開始。


「岳人、前向いて目閉じて」

「お、おう?」


リョーマに急かされる様に言われ、急いで目を閉じる。
次の瞬間
写真を撮ったという合図のわざとらしいシャッター音と共に頬に感じたやわらかな感触。

考えなくてもわかる。


「お、お前っ今何した?」


もちろん聞かなくても解る。


「はい、あとは普通に撮ろ?先輩たちに配るから。…あはは、岳人呪われちゃうかもね」


気をつけて!なんて笑いながらリョーマは言った。


その後は普通に撮って。
何故か落書きは自分がするから見るな!ってリョーマが聞かなくて。
出来上がったプリクラもまだ見せてもらえてなくて。


「見せろって!」

「まだだめ」


なんてやり取りをしてたらいつの間にか家の前。
母親がリョーマと話したがっているのをスルーし、自分の部屋へ向かった。


「ねー岳人、携帯貸して。あとハサミも」

「もーなにしたいんだお前はー!」


リョーマはベッドの上でくつろいでいる。
仕方ないから携帯とハサミを渡すと、嬉しそうにプリクラを切り、オレの携帯の充電パックのカバーをはずし

貼った。


「おいおいお前何貼ってんだ」

「良いじゃん?誰も見ないよ、こんなとこ」


コンコン


部屋のドアが開けられる。
母親がケーキを持ってきたらしい。


「明日車で送ってあげるから、ぐっすり寝てねvv」


なんていつもなら絶対言わない台詞をリョーマに向けて言って。
何かあったら呼んでね、と言って部屋から出て行った。


「さすが岳人ママ、ナイスタイミング」

「はぁ?なにがだよ?」

「はい」


差し出される携帯。


「電池パックのとこ開けて」


言われるままにカバーをはずす。

そこにはさっき撮ったプリクラが1枚貼ってあった。


「HAPPY BIRTHDAY Gakuto♪」


オレがプリクラに書いている文字を読むか早いかリョーマがそのコトバを口にする。
そしてやわらかい感触は頬ではなく唇に。


「おめでと、岳人」

「…ありがと」


リョーマをぎゅっと抱きしめて。
去年の誕生日、まだリョーマに出会ってなかったことが信じられない。
それまでももちろん楽しかったけど。
リョーマにであってガラッと毎日の色が変わった。


「来年も祝ってくれる?」


オレがそう聞くと。
リョーマはニヤっと笑って


「俺の誕生日しだいだね…頑張って」


と言った。


「あ、そ…じゃあ頑張らせて頂きます…ケーキ食うか〜」


特別なことなんてしなくていい。
ただ一緒に居てくれればそれが立派なプレゼントになる。



毎日誕生日じゃん。

そう考え付いたオレは、自分の頭の幸せさに苦笑しながら。
12月、何をしたらリョーマが喜ぶのかを早くも考え始める。



end.
(次におまけ)


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