他校リョ小説
□君の為=俺の為
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真夜中の0時、突然携帯が鳴った。
こんな時間にメールしてくるのは…跡部か岳人か?
忍足がどーだ、日吉がどーだ、宿題は何だと。
とりあえず俺は一息ついてから携帯を取った。
( あいつら、一回返信すると調子に乗ってどんどん送ってきやがるしな… )
読むだけ読んで、シカトしてやろうとメールを開く
が
送り主の名前:越前リョーマ
…
( …ん!? )
俺は急いでメールを開く。
まさかこんな時間にリョーマからメールが来るとは思ってなくて、かなり焦った。
『さみしい、あいたい、だいすき』
何事かと思って少し不安になっていたのに…
メールを読んで、愛おしさからの笑いがこみ上げてくる。
なんて、可愛いんだろう。
俺はメールを閉じてリダイヤルボタンを押す。
愛しい恋人の名前を見つけたら、躊躇いもなく通話ボタン
3コール目でリョーマの声
『…亮?』
「どうした、こんな時間にメールなんて」
リョーマの声はいつもと変わらない。
『メール見た?』
「おう」
『…そのまんま』
なるほど、と俺は納得してしまう。
リョーマは青学R陣 ( いや、他校のテニス部にもか… ) にはかなり素直じゃない態度を取っている。
だけど、俺の前では別だった。
思った事を言うのはいつもだが、生意気な部分が無くなる。
素直になって、言う事もちゃんと聞いて、甘えたがる。
そんなリョーマが、凄く愛おしかった。
「なんかあったのか?」
『んーん、なんにもないよ』
「じゃあ、今すぐ寝なサイ」
『…なにそれっ!ひどすぎるっ!』
俺の言葉の意味を悪い方に取ったリョーマは、目に見えるくらい不機嫌な声を出す。
それがまた可愛くて、俺は笑いをこらえ切れなかった。
リョーマはそれが気に食わないらしく、ダンマリを決め込む。
これ以上怒らせると、今から会いに行って許しを請わなければいけなくなりそうだ。
明日はリョーマを迎えに行く為に早起きするから、夜更かしはきつい。
「わりぃわりぃ、そう言う意味じゃねーんだ」
『…じゃあどういう意味なわけ?』
「俺も今すぐ寝るからさ、夢で会いに行くって事」
沈黙。
そして約10秒後、リョーマの堪えるような笑い声が聞こえてくる。
『…ぷ…っ…り、りょう…キザ…キザ過ぎる…っ!』
はいはい、笑われる事なんて想定の範囲内だっつーの。
こういうクサイ事を言っては、毎回リョーマに笑われるのがオチだからな。
普段の俺からは想像出来ないような甘い言葉
「いーんだよ、お前にしか言わねぇんだし」
『…あはは…っ…他の人に言ったら引かれると思うよ…っ』
「うるせー…リョーマが引かなきゃ良いんだって」
相変わらずリョーマは笑っている。
…少しは、寂しさがまぎれただろうか。
学校も違う、学年も違う、部活も忙しい。
会いたい時にすぐに会いにいけなくて、いつも寂しい思いをさせている。
それでも
可愛い、愛しい恋人には、いつも笑ってて欲しい。
それは俺のわがままかも知れない…でも、それでも
『…ねぇ、亮』
少し落ち着いたのか、リョーマが一呼吸置いて俺の名前を呼んだ。
『俺、電話切ったら直ぐベッドに入るから』
「…おう」
『亮もちゃんと、ベッドに入ってね?すぐだよ?』
「もう入ってるって」
『直ぐ電気消して、明日迎えに来てくれるのを楽しみにしながら、目を閉じるから』
「…あぁ」
リョーマの声が嬉しそうで、俺は自然と笑顔になる。
良かった、寂しさは無くなったらしい。
『だからちゃんと、会いに来てよね…』
「もちろん、約束する」
『大好き、亮…おやすみ』
「あぁ…おやすみ」
俺は携帯を閉じて、目を閉じる。
そして愛しい恋人の笑顔を思い浮かべながら、深い眠りについた。
end.