他校リョ小説
□Gelosia
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「おい、何むつけてんだよ?」
「むつけてなんか無い」
そんなこと言ってもな…顔膨れてんぞ。
「何か気に食わない事でも?」
「なんにも無い」
おいおい…なんだその不満全開の顔は。
「リョーマ」
俺はリョーマの頭に手を置いて、機嫌が悪い訳を話すのを促すように優しく叩く。
リョーマは膨れっ面で俺を見た。
「景吾と居るのヤダ」
…は?
「…急に何言い出すんだお前は」
俺がその言葉を聞いて傷付かないとでも思ってんのか?
それともそれは本気で言ってんのか?
自分でも可笑しくなる位…焦る。
…もちろん表情には出さないが。
「だってさ…」
リョーマの表情は不機嫌そうな顔から悲しそうな顔に変わった。
今にも泣き出しそうだ。
「今日だって折角のデートなのに道歩くたびに景吾は女の人に声掛けられるし。景吾は景吾でなんかイライラしてるし。」
…イライラしてたのはリョーマに声を掛けてくる馬鹿な男共に、で。
人のことは良く気づくくせに自分の事になると本当に疎い。
「俺…楽しみにしてたんだよ?」
そう言ってまたむつける恋人が可愛くて可愛くて、俺はリョーマを抱きしめる。
「…俺も今日は楽しみにしてた。機嫌悪くさせて悪かったな…」
「別に良いよ…デートのときなんていつもこんなもんだし」
「お前…毎回ヤキモチ妬いてたのか…」
「ち、違う!ヤキモチじゃない!イライラしただけだもん!」
「それをヤキモチっつーんだよ」
俺の腕の中で暴れるリョーマのおでこに軽くキスを落とし。
「俺はお前しか見てない…から心配すんな」
こんな事、一回しか言ってやんないからな。
リョーマはびっくりしたのか顔を上げようとしたけれど。
俺は赤くなった顔を見られたくなくて、きつくリョーマを抱きしめる。
「苦しいー!!景吾照れてるでしょ!!」
「照れてない」
「照れてる!!絶対照れてる!!」
「良いから!もう帰るぞ!」
「えー帰るの!?」
「家で2人でゆっくりした方が良いだろ。誰にも邪魔されねぇし。お前も男に声掛けられる事ねぇし…」
馬鹿な男共めが…
「景吾…もしかしてヤキモチ妬いてた?」
「…は?」
「だってソレ、俺と一緒のイライラじゃん?俺のがヤキモチだったら、景吾のもヤキモチでしょ?」
リョーマは嬉しそうに微笑む。
ったく、さっきは不機嫌で、ついさっきは泣きそうで、今は笑うのか。
お前と居ると飽きねーな、リョーマ。
「うるさい。帰るぞ!」
「あ、待ってよ!」
俺はベンチに座るリョーマを置いて一足先に歩き出す。
リョーマは急いで俺の後を追い、俺の横に並ぶ。
「手…繋いでも良い?」
…俺を照れさせるのはお前だけだぞ…
俺は熱くなった顔を隠しながら、リョーマの手を握った。
end.