他校リョ小説

□きみと、つながる
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「あれ?おちびの携帯って黒じゃなかったっけ?新しくしたの?」



連絡なんて来る筈無いのに

携帯を手に、ボーっとソレを眺めていて。

急に菊丸先輩の声が聞こえて、驚いた。



「いや、黒っス」



俺は驚いた事を気づかれないように

平静を装って菊丸先輩の質問に答える。

だけど先輩は

そんな事は特に気にしていないらしい。

俺の手の中にある携帯をじーっと見つめて

見たままの感想を言った。



「…それシルバーじゃん?」



先輩は怪訝な表情を浮かべる。



「シルバーっスね」

「…それは誰の?」

「俺のっス」



俺が親に買ってもらった携帯は黒。

今手の中に持っている携帯はシルバー。

それでもコレが俺のだと本人が言うんだから

先輩が不思議な顔をするのも、わかる。



「…なんで?」

「わかりきってる事でしょ?」



不思議な顔をするのもわかる、けど

俺の事を人よりも多く知っている菊丸先輩ならすぐに分りそうな事。

だから、自分から理由は言わない。

自分から言ってしまったら

なんか大切にしてるみたいで、悔しいジャン。



「…あーあ、跡部か!」

「正解」



先輩はひらめいた様に手をポン!と叩いて

すぐに真顔になる。



「…専用なんて必要なの?」

「さぁ」

「…跡部って重くない?」

「重いね」



景吾と付き合って半年。

菊丸先輩は俺の事弟の様に可愛がってくれてるから

” あんな俺様を具現化したようなやつの何処が良いの ”

と、景吾の話をする度に言っていて。

そう心配してくれるのも、可愛がってくれてるんだと思えるので嬉しかった。

景吾が俺様なのはソレはもうその通りだし?



…それでも



「…おちび」



景吾は俺に対して甘かった。

いつもの俺様とはまた違った、素直な感情表現。

可愛いと言ってくれるし、愛してくれる。

付き合う前はお互いに意地を張って会えばケンカばかりだったけど

付き合ってから、ケンカなんて1度もしてない。

俺は景吾が好きだった。



手の中に納まっている携帯を、見つめる。



「はい?」



付き合ってる事は菊丸先輩にしか教えてなかった。

決して表沙汰に出来るような、まわりから祝福されるような恋愛では無いから

心の奥底に隠してきたし、これからも隠し通すつもり。



「跡部に何か嫌な事されたらすぐ言うんだよ?」

「わかってるっス」



先輩は仕方ないなと微笑んで、俺の頭をぽんぽんと叩いた。



「あと」



今度は呆れた顔をして。



「顔ニヤケてるよ」



そう言って、手をヒラヒラ振って自分のクラスへ戻っていく。

自分ではいつもの表情で話していたと思ったのに

相手の事を考えているうちに、自然と笑顔になっていたらしい。

俺は、急に恥ずかしくなって携帯をカバンの中に押し込んだ。



俺も、まだまだだね



end.



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