他校リョ小説

□罪悪感に似た
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「リョーマ!!」



遠くから聞こえた 聞こえるはずの無い声。



「…赤也!?」



切原赤也…俺の恋人はテニスバッグを肩に掛け

全速力で俺の所に向かってきている。

しかも、すっごい笑顔で。

俺の名前を呼んだ10秒後には

俺の目の前に到着していた。



「な、なんで居るの…」



俺は状況が飲み込めなくて、驚きを隠せない。

赤也は大きく深呼吸し、乱れた息を整える。



呼吸が落ち着き始めた頃、赤也は俺をギュッと抱きしめて



「なんか会いたくなったから、来ちゃった」



と恥ずかしげもなく言い放った。

大好きな恋人にそんな事言われたら

嬉しくないわけが無い。

でも


立海大付属は神奈川。

青春学園は東京。


この距離を俺に会う為に走って来たのかと思うと

なんだか胸が締め付けられた。



「…あれ、嬉しくなかった…?」



複雑な顔をしている俺に気づいたのか

赤也は俺の顔を覗き込む。



「…ごめん、一言メールすれば良かった…な」



赤也は俺の表情を

『迷惑だ』

と受け取ったらしい。


そうじゃ ないのに。


俺はどうしてもそれを伝えたくて

赤也の事を抱きしめ返す。



「…嬉しい、よ!ただびっくりしちゃって…」



自分の気持ちを上手く言い表せない。

それが凄くもどかしかった。

でも赤也は、それを汲み取ってくれたらしい。



「良かった!リョーマも俺に会いたいと思っててくれたなら、それで良いや」



そう言って赤也は、俺の頬に軽くキスをした。

その顔はとても嬉しそうで。

俺の ただちっぽけな言葉も

赤也にはとても意味のあるものなんだって事が良くわかった。



「俺も会いたかった…」



俺はそれがただ嬉しくて

自分はなんて幸せものなんだろう、と

心の中で思う。



住んでる所は遠くて

会える時間は限られてて。


自分の為に何かしてくれる事に

罪悪感に似た胸の締め付けを覚える。


自分の為に何かしてくれる事に

今まで感じた事の無いくらいの喜びを感じる。



「…大好き」



あぁ

それはきっと

赤也のことを

アイシテルからなんだ。



end.



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