碧眼に滴る漆黒

□24.談話に阻まれる
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とうに外の陽は暮れ空は黒く染まり街灯がついていた。ハルは椅子に座り机の上の書類をまとめながらコーヒーに手を付けた。



今日の実験は得るものがあった。エレンの巨人化については目的がないと巨人体になれないこと。



これは重要なことだ。逆に目的がなければエレンが巨人化できないということである。巨人化したのと同時にエレンの手の甲の噛み傷も治癒した。



エレン自身必要なときにすぐ巨人化になれるということもない。そして自傷行為をすれば時間差でも何らかの目的があり次第巨人化になるということ。



巨人化後の強い倦怠感もエレンが巨人化を解いた後自由に動けないことを示している。エレンを巨人体から取り出すときは少なくとも2名の兵士の援護は欲しい。



ハルは実験から得た結果や推測を書類にまとめていく。勿論ハンジの言っていたことも加える。



ガチャ、と急にドアの開く音と入る足音が聞こえた。ハルはその姿を見ずとも誰かわかり机に肘をつきながら先ほどと変わらず書類にペンを走らせる。



「ノックぐらいしたらどうだ?」



視界にのぞく黒髪がこちらに近づいてくる。



「うるせぇ。」



リヴァイはそう答え一段落したように腕を組んで机に背を向けもたれ掛っていた。



リヴァイの頭の中はエレンの実験のことが半分を占めていたがそれ以上に占領してるものがあった。



今朝のエルヴィンの部屋から出てきたことエレンの懐き具合、言葉にするだけで殺気立ってくる。



それが分かっているかなのか言葉にしようと思っただけで正直気だるい。



ハルの目からもリヴァイから微かな気だるさが伝わってきた。きっとリヴァイ班で今日のことでも話し合ったんだろう。しかし昼間から感じたリヴァイの不機嫌さは抜けてはいない様子だった。



「エレンは?」



「倦怠感はもうないらしい。もう地下だ。」



「今日の損害は?」



「強いて言うなら机と椅子だな。エレンが巨人化した時に吹っ飛んだ。」



「巨人化した時の爆発で負傷者はでてないな?」



「あぁ、負傷者はいない。最高の条件内で行えたといっていい。」



背中から聞こえるハルの声にリヴァイは俯きながら報告の様に答える。



「そうか。エレンに敵意がないのは班のものには分かってもらえたのか。」



「あぁ、あいつらも理解している。」



ハルはふとエレンが巨人化した時のリヴァイ班の素早い対応を思い出した。あのときすぐさまにブレートを構えたのはリヴァイ班の奴らだけだ。



「ならいい。お前の班は優秀だな。俊敏な対応ができていた、他の兵なんてブレートすら抜いてなかっただろ。」



「俺はそういうやつらだから選んだ」



ハルはリヴァイがそう評価していることに「それは班の奴に言ってやれ。」と言葉にした。



「しかし多少冷静さに欠けるな。」



「厳しい上司だな。」



そういいながらハルは再びコーヒーに手を伸ばし口にした。リヴァイはついその口元に目が行きコップがハルの口から離れたのと同時に碧眼と目が合った。



「んでお前、なんで今日不機嫌なわけ?」



リヴァイの視線に気づいたのかハルはそう言葉にしリヴァイを見た。



ハルにとっても朝からのリヴァイの不機嫌さには気にかかっていた。これはもう一つの本題だ。



ハルの伸びた金髪の隙間から長い睫とすっとした鼻筋が覗き、既に書類からは手が離れていた。




「・・・・いや、」



態度に出し過ぎた。それはリヴァイ自身自覚はしていたがこの苛々を抑えられることもない。



しかしこれはハルに言うべきではない。いや、言うことではないのだ。



そう思いリヴァイはそう小さく声を漏らすしかなかった。



「なんだ、ハッキリしろ。」



ハルはリヴァイが言葉を塞いだのを見逃さなかった。





 
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