碧眼に滴る漆黒

□26.気疎い部屋
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ハルは日が暮れ空の色が青から変わるころにリヴァイの部屋にいた。



「じゃあ頼む。」



「あぁ、タオルそこに置いとけよ」



リヴァイは椅子に座りハルがその前に立ち掌にワックスを広げる。



今日は都市で行われる晩餐会だ、ハルはリヴァイにいつものように髪のセットを頼まれここにいるわけだが内心穏やかではなかった。



前突然キスされたと思ったらリヴァイはついもどうりに接してくる。ハルは正直そんなリヴァイに混乱していた。



しかも部屋に二人っきりだ気まずくないわけがない。ハルはそう思いながらも今考えるのは無駄だと思いリヴァイの前髪に触れながらそれを後ろに流した。



「ガチガチに固めるなよ。洗うが面倒だ。」



「分かってる。」



いつもどうりに言葉を口にするリヴァイに考え込んでるこっちが馬鹿らしくなる。



でも前のこともありハルはリヴァイに近くも遠くもない距離感をあけ髪を固めていく。



たまたま視線が重なるとハルはゆっくりと視線をずらしていった。



リヴァイはその距離感、視線を分かっていた。その様子につい口角が上がりそうになる。



「もっと近ぇ方がセットしやすいだろうが。」



リヴァイはそう言ってハルの腕を引っ張った。ハルはその勢いでリヴァイに近づきハルの服がリヴァイの鼻を掠めそうになった。



「ちょ、近すぎだろ。頭全部丸め込むぞ」



ハルはその距離感に反応しゆっくりと足を一歩引いた。



近い、か。前ならそんなこと言いすらしなかったくせに。



「そしたらテメェの頭も同じようにしてやる。」



「うるせぇ馬鹿。まんま返すな。」



とハルは引き続きリヴァイの後ろ髪に指を通した。



無駄に感じる緊張感にハルは気疲れしそうだった。きっと俺の考えすぎだ。空気を変えよう。そう思いふとリヴァイに頼んでいたことを思い出した。




「それよりエレンの指導はしたのか?」



ハルが言っているのはエレンに必要な礼儀やマナー、言葉遣いなどの指導のことだ。ハルやエルヴィンは手間が空いておらずリヴァイの班と言うこともありハルが頼んでいたのだ。



「あぁ、」と短く答えるリヴァイにハルが前にペトラがリヴァイがエレンに手厳しい指導をしていたと苦笑いをして話していたのを思い出した。



「一から全部叩き込んでやったから安心しろ。」



どう叩き込んだんだか、とハルは心の中で毒づきながら「ならいいが、」と答えた。



ハルは10分ほどでリヴァイの髪のセットを終え近く置いていたタオルで手に残ったワックスをふき取った。



リヴァイはそんなハルをみながらまだセットされてないハルの金髪の先にそっと指先で触れた。



「俺がセットしてやろうか。」



髪にリヴァイの指先が触れたのが分かり怪しくないようにゆっくりと距離をあけた。



「いい、・・・・っていうか髪セットできるなら自分のをしろ。怒るぞお前」



ハルが知ってる限りリヴァイは髪のセットが出来ないわけではないが上手でもない。たしかその程度だ。



「冗談だ。お前もここでセットしていくか?」



「いや、自分の部屋でするさ。分かってると思うが触るなよ、崩れる。」



ハルはそう言い部屋を出ようとドアに足を向けた。



「あぁ。あと香水だな。」



そう背中からリヴァイの声が聞こえた。その言葉でハルはリヴァイの意図を察した。



舞踏会から現在の期間までに繁華街とかに外出した様子はなかった。それに香気に敏感なリヴァイが前回ハルの香水を自らつけていたことで貸せ。と言っているのだろう。



「そんなにあの香水が良かったのか?」



ハルが振り返りそう口にすると「そうだな、」と答えた。



しかしリヴァイは匂いが気に入ったのではない。リヴァイはハルが使用していたから気に入ったのだ。



ハルはそれには気づかず「あぁ、分かった。後で持っていく。」と言い部屋を出た。



リヴァイはそんなハルの後姿を視界から消えるまで目で追っていた。






 
 

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