碧眼に滴る漆黒
□29.嫌味と世話好き
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エレンはハルの後ろを少し離れた距離で歩いていると1分と立たないうちにハルは貴族の女性に捕まっていた。
「ハルさん!お待ちしてました!」
今にも抱き着いてしまいそうなピンクの派手なドレスをまとった女がハルに近づいた。
「マーレイ御嬢様。お久しぶりですね」
ハルはそんな彼女に優しく微笑みを向ける。エレンはその様子に苦笑いもできそうになかったが更に周囲にもいる女性の視線がハルに向いている。
その女性たちは今ハルとそのピンクのドレスの女が話してるのにも関わらずいかにも自然そうにその中に混じっていく。
1人から2人そこからもう既に4人集まっている。ハルはいつもどうりという風に一人一人が言う言葉に物腰柔らかに返事をしていた。
すげぇ・・・・、あんなに囲まれてる。しかもハルさん動じてない・・・・。
またそれはエレンの知らないハルの一面だった。その女の輪の中にいるハルを見て胸が微かに痛んだ。
「驚いた?」
そう後ろから耳元に声が聞こえついビクッと体が跳ねた。慌てて後ろを振り向くとハンジさんが立ってハルの方を見ていた。
「あ、はい。・・・・・ハルさんってやっぱモテるんですね・・・・。」
「そりゃそうだよ。あちらこちらから婚約の話も来るほどだからね。」
「えっ!!」
その話にエレンは驚きながらハンジを見た。「まぁ、ハルは全部断ってるからね。」とハンジは笑いながら答えた。
断ってる?・・・・なんで?あの人にとっては不利益な話ではないのに。
そう思うのとは対照的に安堵している自分がいた。
「エレンもまずは飲み物を貰いなよ。ウェイターならそこらへんにいるからさ。」
とハンジの手には既にワイングラスが取られていた。ハンジは奥に駐屯兵団の上官を見つけ「あ!挨拶いかないとね!」と言ってそちらに歩いて行ってしまった。
エレンは一人孤独感を感じながらも先に飲み物を貰いに行くことにした。
「相変わらず。大変そうですね、訓練も毎日してますの?」
「えぇ。体が鈍ってはいけませんからね。」
「それでこんなに体が硬いのね。」
と言いながらピンクのドレスを着た女と純白のドレスを着た女がハルの体にそっと触れてくる。ハルの中は表情とは対照的に鬱陶しい。この一文字だった。
先ほどから甘い香水の香りが鼻をずっと掠め嗅覚が麻痺しそうだ。
あたりを見るとエレンは貴族の女と話していた。きっと女の方から声を掛けたのだろう。エレンぐらいの年は珍しいからな。
二人が笑ってるのを見る限り問題はなさそうだ。そのまま奥を見るとハンジと駐屯兵団の上官が話している。様子を見る限りハンジの爆走は見られず蹴らずにすんだようだ。
リヴァイは奥で食事を取りながらナイルと話していた。そりゃ憲兵の団長だ、来るのは当たり前か。と目をやる。
ずるい。あそこに行きたい。超楽しそうじゃん、俺混ぜてほしいし。つい呑みのモードに入りそうだ。
よし、ここが片付いたらリヴァイのとこに行こう。そう思いながらもハルは今だ周りの女性も相手していた。
勿論エルヴィンに近づく周辺の女の警戒も欠かさない。エルヴィンに手出したら殺してやる。そう心の奥に隠れた殺気には誰も気づかないだろう。