相愛は偽り

□V.期待
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/黒子












今日は曇りひとつない晴れ



教室にあまり人の姿はなく、みんな体育館かグラウンドだ



・・・・・体育祭ですか。



学校行事は好きではない



ただ騒がしいのを好まない



「テーツっ」



と隣にすっと瑞貴がきた



「・・・・・・なんですか、そのピン」



彼は前髪をピンで留めていた



「やっぱおかしいよな!これ!」



・・・・おかしくはない



むしろ端正な顔によく似合っている



いつも前髪がかかっていたから少しスッキリしている



「いいんじゃないですか。」



「はぁ!?ホントに?」



彼は少し嫌そうな顔をしていた



「嫌なら外せばいいじゃないですか」




「いやー・・・・クラスの子が止めてくれたし、取ったらすげー文句言われんの。」



「・・・・どうでもいいです。」



「うわっ!ひどいテツー」



そのままグラウンドに足を進めれば隣の人に周囲からの視線が集まる



「うわ、見て見てー///」



「前髪留めてるよ、超かっこよくない!///」



そして彼はこの整った顔もあって女の子からの人気があるようだ



「篠原くーん、」



と前から女の子が近づいてきた



「わー、犯人来たー」



「なによー、犯人って」



「もうピンとってよくね?これなんか恥ずかしいしさー」



「ダーメ!そのまま超一日過ごすこと!」



「えぇー!」



「罰ゲームなんだから!」



女の子とは仲もいいらしい



まぁ、それは自分のクラス内とかだろう



彼とは同じクラスだが気づかれたのは最近だ



同じクラスの部員としてよく話しかけてくる



とりあえず先生の放送に従い競技を進める










『障害物に参加する人は集合してください』



その放送で嫌々ながら足を進める



競技が始まると次々とクラス順にスタートする



特に緊張なんかはしない



いつもどうりに終わらせるだけだ



「はーい、では構えてー!」



始まりの笛が鳴ったのと同時に走る



平均台やらボール転がしやら菓子パン食いやらなんやら



走っていると突然何かに足が引っかかった



「・・・!」



バランスが取れずそのままコケてしまった



「あっ、悪い!」



きっと足が引っかかったであろう人が謝ってきた



「平気です」



そんなに大げさにこけなかったものの膝から血が出ていた



僕はとりあえずすぐ立ち上がってゴールした



・・・・4位。



ビリから二番目だ



「テツ!」



その声につい反応した



瑞貴だ



「すいません。4位でした」



「順位とかどーでもいいよ。どこ怪我したんだ?」



と彼が僕の顔を覗きこんできた



あぁ、怪我・・・・知ってたんだ・・・・。



「膝ですけど・・・、擦りむいた程度ですので・・・・。」



「わ、痛そーじゃん。」



「平気です。そんなに痛くありません。」



そう話していると大きい影が光を遮った



「瑞貴ちーん」



そういって紫原は瑞貴の肩にのっかかった



「うわ!敦・・・!」



「だるかったー。疲れたしー」



「ん、よく頑張りました。」



そう言って彼は紫原の頭を撫でた



「瑞貴ちん、なんで前髪留めてんのー?」



「クラスの罰ゲームでちょっとね、・・・・やっぱ変?」



「全然、似合ってるよ瑞貴ちん。可愛いしー」



「敦、俺のこと全部可愛いって言ってねー?」



「えー?だってホントのことだしー」



僕は二人が話していたので触れず水で膝の血を洗い流しに行こうとした



「あ!テツどこ行くの?」



「水道で血を洗い流してきます」



「だめだめ。保健室いくよー!・・・あ、じゃ敦ごめんなー」



と彼はスッと紫原の腕の中から抜けてきた



「えー、黒子ちんいいなー」



紫原君は篠原君のことを好いているからそのことだろう



ちょっとだけ優越感を感じたりする



「すいませーん。センセー」



結局、篠原君に連れてきてもらった



保健室はガラリとしていて人気がなかった



「いませんね・・・・」



「んー、仕方ないか。・・・・テツ、そこ座って。」



と手を掴まれて椅子に座らされた



瑞貴は保健室の配置場所が分かっているのか棚を勝手に開け始めた



「なにしてるんですか」



「とりあえず手当て?」



「自分でします。」



「いーから。」



そう言うと彼は消毒液と綿をもってきた



この感覚が久しぶりでどこかかゆかった



「はい、痛いよー」



篠原君は僕の足元にしゃがんで傷口に手当てを始めた



・・・・・睫長い。



彼の頬に睫の影がおちる



長い切れ目にスッとした鼻筋



篠原君、綺麗な顔してる・・・・。



「・・・・はいっ!おっけ」



ぱっと彼の顔が上がり目が合った



心臓がドキッとなった



「・・・・ありがとうございます。」



「いえいえ。じゃ、いこ?」



「はい、」



まだ少しドキドキしている自分がいた



「てか俺2000ぜってー無理な気がする」



「あぁ、青峰君と黄瀬君ですよね」



「そー!無茶だろー」



「頑張ってください」



「んー・・・、よし!頑張る!!」



と笑顔になった彼を見て僕も笑ってしまった









 
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