情報屋と金木くん
□黒髪の青年
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金木side
いつものようにしんとしている廃墟のビル
似合わないソファーに腰を掛けいつものように小説を手にしていた
すっと小説の文章が頭の中に入る
僕はこの時間が好きだ
誰にも邪魔されずに自分の世界に入れる
これは高校の時から変わらない
もう読み終わるな、
そんなことを思いながら残りのページを目に通す
コーヒーを作ろうかと台の上を見るとコーヒーメーカが見当たらなかった
あぁ、下の階だ。
下の階しか水道が流れてなく最後にコーヒーを淹れたのがそこだと思い出した
仕方ない、そう思い小説の本を開いたまま机に伏せ腰を上げた
部屋を出て階段を降りると微かに人の声がしてきた
アオギリ内でも談話をしてることが珍しいくらいだ
そう怪訝に声の聞こえる大広部屋に入ると椅子に座っている絢都君とタタラさんともう一人最近見慣れた黒髪の青年が見えた
この人、来てたんだ。
コーヒーメーカが水道の近くに見え電源を入れようとその部屋に入ると「久しぶりだな。金木」と彼の声が耳に響いた
「・・・・こんにちは。」
そう返事を返すとその黒髪の青年は「いいとこに来たな」と笑顔を向けてきた
黒髪に漆黒の瞳、中性的な顔立ちをしていて青年と言っても俺より年上だ
言われることも大体予想がつく
「俺のも淹れてよ」
「ブラックしか作れませんよ」
「いいよ」
いつもの彼の言葉についため息が出そうになる
俺はそのままお湯を沸かしコーヒー豆を機械の中に入れる
背中からは3人の会話が微かに聞こえてくる
「だから白鳩はどんどん勢力を増してる。アオギリの動きに合わせてるよ。あと最近は対策局の方でパトロールが始まってる」
「パトロールだと?」
「あぁ。大体捜査員の方は2人1組がペアだから2人組で商店街、繁華街を回ってる。」
「アイツら俺たちが赫子出してなかったら喰種なことも分からねぇ癖に」
「だから万が一捜査官にバレたらすぐ増員が来ることも考えといたほうがいい」
とその男は絢都君とタタラさんに向けて説明をしている
説明というのがいいのか情報提供がいいのか、
彼は情報屋だ
別にアオギリに属している奴でもない
ただのフリーの情報屋
俺もそんな人がいるのを最近知ったばかりだ
「・・・・そうか、わざわざ悪かったな。」
「いや、アオギリさんには色々お世話になってるし。今回少し安くしたあげようか?」
「ったりめーだ!馬鹿!高ぇんだよお前んとこ!」
と絢都君が怒ったように言うと「ごめんごめん、」なんて笑って答えている
きっと悪いなんて一つも思ってないんだろう
確かに前絢都君から『情報屋』について聞いてみると情報は確実で詳細まで教えてくれるものの値段はそれなりらしい
手に入りにくい情報ほど金額が高くなるらしい
僕はコーヒーを淹れ終え彼の座っている机まで運んだ
「お、ありがとー。」
なんて友達みたいな口調でいうこの人は人見知りなんてないんだろう
まるで初対面の人でも友達みたいな感じに接してくる
別に気に入らないわけではないが学校のクラスにでも例えて見れば苦手な分類だ
「別にコーヒーメーカーならあそこにあるから勝手に使っていいですよ」
彼はコーヒーを受け取りそのまま口に運ぶ
「俺が作るより金木の方が上手いから」
そう答え彼は空いた隣の椅子をポンポンと叩き「座る?」と聞いてきた
周囲を見ると『仕事』はとりあえず終わったのかタタラさんの姿はもうなかった