情報屋と金木くん

□苦手なレストラン
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葵side











[みなさん!お待たせしました!今日のメインディッシュです!]



その司会の声が会場に響き渡り無駄に歓声が上がる



ギャラリーから下を見るとその状況に戸惑う人間が見える



喰種で知らない人はいないくらい有名な『喰種のレストラン』だ



俺も周りにあわせスーツに慣れないマスクをしたおかげで違和感を感じる



下の床には以前捕食されたであろう血がこびりついている



ここはいつ来ても苦手だ



血の匂いが強くそれに高揚する喰種たちに混じりながらこっちは情報収集だ



俺は自然に会場の様子に昂奮して見入っている赤いドレスを着た白のファーを巻いている女の隣に向かう



「こんにちは。お久しぶりです」



そう声を掛けるとその女もこちらを見て「あら、」と声を漏らした



「いらしてたのね。お久しぶり」



「あれ、前のスクラッパーとは変わってますね」



と前までいた図体の無駄にデカいマザコンストラッパーを思い出す



「そうなの。前のスクラッパー君は食事になっちゃってね」



喰種は相手が喰種だと思うと色々なことを話してくれる



そう考えれば警戒心の高い人間よりは喰種の方が話しやすい



「食事?」



「そうそう。でもあの隻眼の喰種の味も気になってたのだけどね」



隻眼、ねぇ。



「その隻眼の喰種の代わりにスクラッパー君が食事に?」



「まぁ、あのMM氏が言うんだもの仕方ないわ。」



「MM氏っていうのは確か月山さんっていう方でしたっけ?」



「そう、月山家の方よ。美食家で有名だしあの方が提供してくださる食材は美味なものばかりよ。」



これは今までに何回かここに足を運んでいたから知っている情報だ



ここに来る喰種は味に嗜好を凝らしている喰種ばかりだ



どうやら喰種でも食べれば何でもいいなんていう考え方でもないらしい



その上金持ちの喰種ばかり。どうやって金を稼いでるのか知りたいもんだ。



見た目もいつの時代だよ、っていうくらい派手で奇抜だし苦笑いすら出ない



「今日も美味しそうだわ」



とこの女は下でストラッパー君に追われる人間を見て舌を舐めずった



この距離で話していてもこの女が俺が人間だと気付かないのは香水で人の匂いを消しているからだ



喰種は確かに嗅覚は鋭いがそのあまり香水やムスクをつけている人間は見分けるのに集中力と時間がかかる



まさか人間が喰種のレストランの客として来てるなんて誰も思わないだろう



「でも俺にはストラッパー君の方が美味しそうに見えますけどね」



そういうとその女に「また横取りする気ね?」と冗談気に言われた



「バレましたか。欲しいものは独り占めしたい主義なんです」



そう笑って答え俺は「では失礼します」と声を掛けてこのレストランの司会者の方に歩いて行った







 
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