情報屋と金木くん
□温もり
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金木side
街灯のない道路
いつも出歩くならこの道を好んでいた
ただその日はいつもと違った
鼻を掠る血の香り
コンクリートの地面を見ると血の跡が所々見える
人間が喰種に襲われたか、喰種の共食いか、
でもこの血の匂いは確実に人間のものだ
耳を澄ましてみるが周囲からは叫び声も人の声すら聞こえない
俺はただその血の跡を追って歩いていた
するとちょうど血痕が途切れたところビルの前で足を止めた
するとヒュー、ヒューと何かの音が微かに聞こえてきてそちらに目を向けてつい目を見開いた
黒髪の青年が大怪我をして壁にもたれて倒れていた
地面には血が広がっていたが微かに口元からヒューと呼吸の音が聞こえる
その人は見たことのある人だった
なんで、
「・・・・・葵さん?」
そう恐る恐る声を掛けると生気のないような瞳が一瞬こちらを向いて気力が尽きたように首がカクン、と下を向いた
その勢いでバランスを崩し壁からずり落ちるように地面倒れそうになる
「葵さん!」
そうつい叫んで地面に倒れないように膝をつき彼の上半身を抱え込んだ
口元に耳を当て呼吸を確かめると微かに聞こえ気絶したのか、と安堵した
それにしても怪我が酷い
右腕と太腿から出血があり喰種みたいにすぐ治ることはない
他の喰種に襲われたのか、
そう思い僕はぐったりとしている葵さんを抱きかかえ自分の部屋に急いだ
ぐったりした葵さんに衝撃を与えないようゆっくりとソファーに寝かせる
手についた彼の血のいい匂いが鼻を掠めた
そう思った自分に苛々する気持ちと裏腹に本能に従う体はそのまま手についた血を舐めとった
人の血を口にすることすら久しぶりだ
あぁ、ヤバい。
赫眼が出てきそうになって片手で左目を抑える
落ち着け、・・・・手当てをしないと。
俺はそんな気持ちを抑えながら血をふき取り傷口の処置をした
止血をしガーゼと包帯を巻いた
俺は葵さんをベッドに移動させゆっくり横にした
彼の胸に耳を当てるとトクントクン、と心臓の音が聞こえる
同時に体温を感じその感覚に「良かった、」と声が漏れた
あったかい、
人の温もりにも触れるのは久しぶりだ
そっと手を握ってみると暖かく僕はついその温もりに縋るようにベッドサイドに座ったまま手を離さなかった