情報屋と金木くん

□ただの善意
1ページ/1ページ

葵side











呼吸をしたときの胸の痛みで目が覚める



視界に入ったのはどこか古びた天井だが初めて見た気はしなかった



体に感じるのはベッドの柔らかな感覚



つい起き上がろうとすると胸と右腕に鋭痛が走る



「っ・・・・!」



その時に昨日のことを思い出した



喰種に攻撃されて、追われたんだっけ、



肋骨も折れたままか



起きたばかりで記憶が曖昧だ



何よりビル付近で倒れた後から覚えていない



手に感じた温もりにそちらに目をやると金木が俺の手を握ったままベッドにもたれるように寝ていた



あぁ、そうだ。最後に誰かに名前を呼ばれたんだ。



金木だったのか、



そうしたらその後のことは想像がついた



傷口を見てみれば痛みはあるものの丁寧に包帯が巻かれていた



金木君に助けられました、って感じかな。



でも喰種が?人間に?なんで?



頭の中は生きてるという安心よりなぜ助けてくれたのか、ということが不思議だった



俺を助けたメリットは情報が途絶えないですんだことくらいかな



いや、彼の場合ただ単の善意か



そう考えてみるが彼の幼くみえる寝顔を見て考えることが馬鹿らしくなった



俺はソファーとかでも良かったのに



きっと心配してくれたんだろう



俺は手を離そうと動かすとそれが分かったのかギュと握られた



「ん、」と金木が微かに声をあげて目を開いた



「・・・・金木、おはよ」



「・・・・・・葵さん、起きたんですか?大丈夫ですか?」



金木もまだ微かに眠気はあるのか俺の顔を見ながら目をゆっくり開いたり閉じたりしている



「はっ、なにねむてーの?・・・・大丈夫。お前が手当てしてくれたおかげで今だいぶ楽だし」



「そうですか、」



「あとこの手は心配してくれたわけ?」と金木が握ったままの手を引っ張ってみる



するとハッとしたように俺から手を離した



「ははっ、なんで離すのー」



と笑いながら彼の髪をがしがしと撫でてやると「やめてください、」と小さい声が聞こえた



「なんで助けてくれたの?」



「・・・・倒れてたからです」



「人が倒れてたら助けてくれるんだ?」



「・・・・それ以上の理由がいりますか?」



そう聞き返されるなんて思ってなくてつい笑って「そうだね」と答えた



「葵さんはなんで倒れていたんですか。あの周辺は他の喰種がうろちょろしてますよ、僕が見つけなかったらどうするつもりだったんですか」



「怪我をしたのは他の喰種に襲われたから。怪我であれ以上歩けなかったから金木がいなかったら死んでたよ」



「よくそんな飄々と言えますね」



どこか苛々したように金木の口調が微かに変わったのが分かった



「人間は喰種より脆いんです。そんな傷も治せないのに」



確かにこのくらいの怪我なら喰種なら1日もかからないだろう



彼がいちいちそう言うがただ単に心配してくれているように聞こえてしまった



人情ありすぎ、



こんなキャラだったっけ。金木って。



「そんな人間を助けてくれたのは金木でしょ」



そういうと彼は口を閉じ小さくため息をついた



「もういいです。コーヒー入れてくるので待ってて下さい」



そう言って金木は下の階まで降りて行った






 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ