情報屋と金木くん

□気まぐれな人
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金木side










葵さんは肋骨も折れていたようでベッドの上で浅い呼吸を繰り返している



喰種と比べ人間は治るのにただ時間がかかる



今の葵さんの状態ならまだ痛みが強く歩くのも困難だろう



電波も入ってこないここはテレビもラジオも置いてなんかない



ただ部屋にあるのは机とソファーとベッドと本くらいだ



葵さんの食事は夜中にコンビニとかに出て買うくらいで必要なガーゼとかもそこで買っていた



ただ僕は人間だった時も一人暮らしだったから部屋に人がいるということがなんだか不思議な感覚だった



僕はコンビニで買ったサンドイッチとコーヒー二つを片手に部屋に戻る



するとベッドの上で小説を読んでいる葵さんが視界に入った



歩けるまでの治癒期間に「退屈だ、」という彼に僕が貸した小説だ



「葵さん、サンドイッチです」



と彼に袋に入ったサンドイッチを渡すと小説を置き「いつもごめんね、」と遠慮気味の声が聞こえた



きっと言葉だけだろうけど。



「コーヒーも持ってきました」



「さすが。やった」



と言って彼はそのままコーヒーを受け取った



「体の調子はどうですか?」



「んー、まだもうちょい。足の傷が思ったより深かったみたい。」



「息はまだしんどいんですか」



「いや、大分良くなってきたよ。金木がこうして世話を見てくれるしね。」



葵さんはコーヒーにゆっくり口をつける



比較的に一人の方が楽なはずなのに彼の存在は特に気にならない



それはむやみに話しかけてきたりしないし何より空気の読める人だからだ



話しかけてほしくない時は彼なりに察してるのか話しかけてこようとはせず僕が何かを話そうかと思った時に話してくれる



それは対人関係を熟知した情報屋のスキルだろうか



彼は柔らかな感じで友人と話すようにくだらない話ばかりしている



仕事柄彼が内心なにを思ってるのか僕が分かるわけでもないが特に警戒心も抱かなかった



まぁ、普通なら逆に人間である葵さんが僕たちを警戒すべきだ



警戒なんて欠片も見せない



喰種の僕が葵さんを食べてしまうということもあるだろうに



ただ信用されているのか



「まぁ、歩けるようになったらちゃんと自分の家で療養するよ。きっと仕事もたまってる」



最近分かったこと



彼は呑気にしているイメージがあるが意外と仕事熱心で真面目だ



「情報屋も大変ですね。」



「まぁね。バイトしてみる?」



そして冗談が好き。



「バイトとかあるんですか。時給5万がいいですね」



「ははっ、なにそれ。時給っていうレベルじゃないし、1日どんだけ稼ぐの」



と彼は口元を抑えて笑みを浮かべている



その様子に僕もつい笑みが零れた



「ふふ、嘘ですよ。」



その時に彼が口を閉じて僕の方をみて首を傾げていることに気づいた



・・・・なんだ?



「笑ったね、」



そう嬉しそうに言う彼の表情に心臓がドキ、としたのが分かった



「・・・・・笑ってません。」



そう意地になって答えると「かわいー」とからかうように言ってきた



「赫子出しますよ。」



「うっわ。まじごめん。死ぬから。絶対死ぬからそれ」



彼は「ごめんごめん、」なんて適当に謝まる



本当は謝る気なんてないくせに。



「まぁ、いつか借りは返してもらいます」



「それはもちろん。俺の恩人だからね。金木だけ情報料を無料するとか、金木の情報だけは外に漏らさないとかたくさんあるけど」



その言葉を聞いてやっぱタタラさんが色んなところに情報を売っているというの本当なんだ、なんて思いながらサンドイッチを口に運ぶ彼を見る



情報屋、か。



「そういえば情報屋ってどんな仕事するんですか?」



「仕事?そりゃ幅広いけど主に情報収集とその売却くらい」



「情報収集って例えば喰種の中に混じったりとかですか?」



これは少し冗談のつもりだったが「そうだね、」と気にした様子もなく返事を返すこの人に呆れる



確かに葵さんならしそうなことだ



しかも人間って見分けもつかないように馴染んでそうだ



「勿論警察とか喰種対策局の関係者に混じって情報を取りに行ったこともあるし」



「潜入捜査みたいですね」



「お、いいね。潜入捜査。なんかカッコいい」
 



「カッコよくないですよ。良く捕まりませんね、ホント」



ハッキングもしてたらしいしそれに加え相手に混じるなんて彼のすることは結構大胆だ。



その割に正体がわれないというのは不思議だ



「俺誤魔化すの上手いしね。金木みたいに人見知りじゃないから」



そう言われ葵さんの方を見ると「人見知りでしょ?」なんて当ててくるように言ってくる



「勝手に決めないで下さい」



人見知りでも葵さんみたいに人懐こくもない。



ただ興味がないだけだ。



でもそこのベッドにいる男は一緒に気楽だ



「えー、違うのー?」なんて言いながらサンドイッチを口に運ぶ葵さんの横顔につい頬が緩んだ








 
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