情報屋と金木くん

□奇妙な生活
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葵side











金木はアイギリでも一歩引いた存在になってる



きっと俺が勝手にそう思っているだけだろうけど。



身動きが取れない今はこの少年に甘えるしかないんだろう



意外と優しいし面倒見がいい



と目の前に置かれたいつものコンビニのサンドイッチと淹れたてのコーヒーを見る



介抱までしてくれるなんて思ってなかった



ベッドの食事もガーゼの取り換えも全部彼に任せたままだ



それ以外は金木はほとんどこの部屋のソファーで小説を読んでいる



きっといつもこんな感じだったんだろう



まぁ、確かに彼の選ぶ小説は面白いけどね。



俺は読みかけの小説にしおりを挟み枕元に置いた



コーヒーに手を伸ばし口に運ぶ



あんてぃく、だったっけ



金木が前働いてたとこって。



金木は気付いてないけど会ったことあるんだよね



あの時は黒髪だったから最初アオギリで会った時は全然気づかなかった



雰囲気も全然違う上に戦闘力だって急に跳ねあがってた



そのままソファーに座って小説を読んでいる金木を横目に見る



「ねぇ、それなに読んでんの?」



「『虹のモノクロ』です」



でた。また高槻作品だ。



「前も読んでなかったっけ?」



そういいながらピリリ、とビニール袋を破りサンドイッチを取り出した



「読み返してます。」



「ふぅん。まぁ面白いけどさ、飽きない?」



「飽きません。・・・・もしかして飽きたんですか?」



と金木は俺の枕元に置いている小説に目をやる



飽きたまでは言わないが四六時中読書というのはネット中毒の俺には厳しいものがある



「いや、小説は面白いけどさー。・・・・・嘘、飽きた。まだ外出駄目かなー」



もうずっと引きこもりをしている



忙しくしてた身としては逆に苦痛だ



自分の怪我の状況は自分がよく分かってるが学生時代の無駄な夏休みみたいな感じだ



金木は呆れたようにため息をつきソファーにもたれ込んだ



「ダメです。せっかく治りかけてる傷口開きたいんですか」



「いや、痛いのは俺もあんま好きじゃない」



「ならじっとしてて下さい。」



どっちが年上なんだか、とつい可笑しくなる



始めはせっかくの機会だから情報収集でもしようかなんて思っていたが俺の面倒を見てくれるのがただの善意だと分かってからはやめにすることにした



最低でもアオギリのアジト内だし彼らの動きは分かるけどパソコンがない時点で意味なし。



俺と金木の間に流れる沈黙は別に苦ではないけどお喋りな俺からしたらつまらない



「金木ってさ前あんてぃくってとこで働いてたんだって?バイト?」



なんて白々しく聞いてみる



すると「そうですよ、」と特に反応もなく返事が返ってきた



そこまで調べられてたのは予想してたってことだろう



「だからコーヒー上手いんだね。俺が淹れるのと全然違うんだけど」



「豆が違いますから。」



「じゃあ今度豆分けてよ」



「買ってください。」



「ヤダ。めんどい。」



「葵さんって面倒くさがりですよね」



「金木はケチだよー、いいじゃん。ちょぴっと。」



「ね?」と首を傾げて言うと「・・・・仕方ないですね」と呆れたように答えた



金木研、彼の情報は大体は把握できていた



全てという訳ではないけど元が人間だったことやリゼの身体を移植されたこと



そのあとはあんてぃくに入って過ごしていたんだろう



あんてぃくは芳村さんもいるし善い人ばかりだ



俺だって人間から急に喰種にでもなったらあんてぃくに行くし。



絢都の姉ちゃんも綺麗だったけどあれ絶対作ってんもん。絶対怖いし。



そうあの時の接客笑顔を思い出すと苦笑いが出そうだ







 
 

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