碧眼に滴る漆黒

□8.初恋と相違
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ハルは強い倦怠感に襲われながら明け方帰ってきた



昨日の今日だ。ハルは正直誰にも会いたくなかった



体からはサラからの甘い香水の香りがしている



遠くで足音がかすかに聞こえ、その足音に目をやるとエレンの外の掃き掃除をしていた



早ぇえよ。年寄りかよ。と思いながら本部の入り口は一つだけなのでそこに向かう



エレンは眠そうに目を擦りながら周りを見た



エレン自身自分で目が覚めて自主的に掃除しているわけではないのだ



視界に入った金髪の男に一気に目が覚めた



「ハル補佐官!おはようございます!!」



エレンは慌てて敬礼をした



その時の彼の姿はオールバックにしていた前髪はいくらか崩れ目にかかっておりそれでいて着ていたスーツは少し着崩されていた



それは明け方で誰も外にいることはないだろうと思い楽に着ていたものだった



エレンはその容姿にドキッとさせられる



それでもエレンは彼から訓練を受けたことはあり厳しさもよく知っていた



エレンは彼がなぜこんな明け方に帰ってきたのか疑問に思いながらどこかいつもと違うハルの雰囲気にのみこまれていた



「朝早えーだろうが。馬鹿」



「はっ、はい!すいません・・・。」



エレンはその彼の口調に少し唖然としながら前の食堂の時と同じだと思いだした



ハルはエレンが外に解放されていることについてやっと思考が働き始めため息をついた



「リヴァイは起きてるんだな?」



「はい!・・・ハル補佐官も遅い帰りですね、お疲れ様です」



「あぁ」



短い返事の後エレンはハルから甘い香水の匂いがすることに気が付いた



「・・・・おい、変な匂いするか?」



エレンは決して反応として示していたわけではないがそれに気づかれ焦った



「あ、いえ!何も匂わないです!」



「嘘つけ餓鬼」



これは不機嫌だ。不機嫌MIXだ。とハルの眉間に皺が寄ったのを見て確信した



「す、こし花のような甘い香りがします・・・。」



しぶしぶ正直にそう答えるとハルは更に嫌そうな表情をした



機嫌を取る方法の知らないエレンはただその様子に冷や汗が流れる



「消臭剤」



そう言われてエレンは「はいっ」と返事をし箒を置いて近くのリネン室に急いだ



コツ、コツ



後ろからはエレンのあとを追うハルの足音が静かに響く



エレンは歩くペースを合わせながらリネン室につき先に入る



バタン、



リネン室にはドアの閉じた音が響き部屋にハルと二人きりという状況にエレンは不機嫌そうな彼を横目に戸惑っていた



エレンは棚の中から消臭剤を取った



「ハル補佐官、」



と消臭剤を横目にハルを見るとスーツを脱ぎ広げた



掛けろということだろうか、とエレンは戸惑うながらも彼の目は明らかにそう示していたためまんべんなくスーツに振った




「さっきよりはマシになったな。助かる」



とハルはさっきの不機嫌そうな表情とは打って変わってそそくさ微笑んだ



「エルヴィンはさっきの匂いは嫌いだからな」と呟きながらスーツを着なおした



「・・・・スーツ、お似合いですね」



とエレンは無意識にハルを見て呟き彼がこっちを見たことで自分が口走ってしまったことを自覚した



「そうか?それは嬉しいな。お前は女に引っかかるんじゃねぇぞ」



とハルに頭をガシガシと無造作に撫でられた



驚いて彼を見ると無邪気そうな笑顔が見えた



「あと、お前んとこの兵長に早起きさせないで下さいって言っとけ。」



とハルは意地悪そうな表情をしながら部屋を後にした



バタン



「・・・やべぇ。」



1人になった部屋でエレンは頬を微かに染めてそう呟いた






 
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