碧眼に滴る漆黒

□9.始まりは首輪のない犬から
1ページ/2ページ












最近誰かさんの危険がすこぶる悪い。それもまだ1人だったらいいのだがもう1人ゲルガーの隣にいた



「・・・おい、どうした?」



「なんだ?」



ゲルガーは思い切って言葉を発するがハルは綺麗な作った様な笑顔でゲルガーに返した



さっきからずっとこの様子だ



傍から見れば変わりなさげだが分かる人には伝わるのだ



ハルの浮かべる表情がそれだ



彼が周りに当たらないというのはそれほど本人が気に入らなかったことだろう



よし、関わらないでおこう。そう判断したゲルガーは「なんでもない」と言葉を返した



その二人の姿を発見したハンジはテンションがあがり右の金髪の男に向けて後ろから飛びついた



ガバッ



「ひゃほー!!いいなぁ!私も入れてよ〜!!」



ハルはハンジの気配に気づかず不意をくらいハンジの方に振り返り頭を鷲掴みにした



「調子のってんじゃねぇぞ」



あ、いつものハルだ。ゲルガーはそう思いながらハンジを哀れに思った



「いでででででで」



「テメェもっと静かに来れねぇのか」



「ハル!頭!ハンジさん死んじゃう!!」



「お前が100人いたとしたらそのうちの99人は俺が殺してやる。」



ハルは先ほどまで抑えていたであろう殺気を放っていた



「ハル、頼む。離してやってくれ」



ゲルガーがハンジを哀れに思いそう言うとハルの手がゆっくりと緩んだ



「いってぇええ!!死ぬかと思った!!」



とハルの手が緩んだ瞬間にハンジは頭を押さえ騒いでいる



「ゲルガーに感謝しろよ」



と冷たい声が響く



きっと今の彼を女子たちが見れば恐怖で固まるだろう



「っていか、最近ハルさなんでそんなに不機嫌なの?」



あぁ、やっぱコイツもう知らない。とゲルガーは二人を視界から外し窓から外を眺めることにした



「うるせぇよ。別に関係ないだろ」



「それが関係大アリ。ハルが笑顔と優しさを異常に振りまくから午前に女子兵が3人倒れたし数人がハルの異変を感じとってビビってた!」



「それは俺のせいじゃない。その兵が悪い」



「それにもう一人明らかに不機嫌だしねー、 ハルたち喧嘩でもしたの?」



勿論ハンジのいうもう一人とはリヴァイのことだ。ゲルガーはすぐにわかり「どうりで」と小さく呟いた



確かに最近彼らの影響を受けている人たちは少なからずいた



ハルは不機嫌さを表面に出さないタイプだがリヴァイはその逆だ。誰から見ても分かりやすすぎる



立体起動の訓練の指導も半分は死んでたな、ありゃ。



「リヴァイには新兵たちもビビってたよー!まぁ、あれだけ不機嫌そうにしてりゃーねー」




ゲルガーは話の最中だったが時間を確認し午後の訓練の時間になるため席を立った



「悪いが俺は時間だから訓練に行ってくるよ」



「わかった」とハルはゲルガーを横目に答えハンジは「いってらっしゃーい!」と手を振っていた



「喧嘩はしてない。ただ言い過ぎただけだ」



ゲルガーが行ったあとにハルがそう答えた



「リヴァイが寄ってこないほどに言ったの?」



「深く関わってくるなと言ったのとその時の態度がひどかった気はするが」



ハンジはハルもそれなりにリヴァイを気にしてるんじゃないかと思いながらハルの横顔を見た



「どうするんだい?ハル、こーゆう関係って嫌だろう?」



きっとこの二人の喧嘩の場合はリヴァイが先に折れて謝りに来るだろう



「あぁ、これは俺が悪い。俺が謝るさ」



確かにハル自身少しリヴァイに対し悪かったと思っていた



リヴァイは心配してあんな時間に部屋に来てくれたのだ



それを迷惑のような言い方をしてしまった。



「それにしてもハルがリヴァイにそこまで言うのは、珍しいね・・・。」



「俺は疲れてたし気分もよくなかったからな。」



とハルが少し前に屈みこむ



その様子を見ていたハンジはふと違う場所に目が奪われた



服の隙間から見えた肌に赤い鬱血根が見えた



先ほどのハルの言葉でハンジはエレンがハルが明け方に帰ってきたと言ってた時があったなと思い出した



確かその前夜は貴族との舞踏会かなんかだったかな、



とハンジのたどり着いた答えはあまりにも単純で正確だった



「そいえばハルさ、前の舞踏会またどこぞの女につかまったの〜?」



「は?・・・あぁ、ファーナル家のあの令嬢に少しな。」



「あの婚約とか申し込んでた人だよね!まだ惚れられてんだねー!」



「その話はやめろ。あの女の話はするな」



そのハルの様子にハンジは確信した



「ハル!その女と寝」



ドォン!



ハンジのいいかけた言葉はハルの蹴りによって遮られた



「探ってんじゃねぇよ」



マジか。とハンジは慣れた痛みを蹴られた背中に感じながら確信した



そりゃリヴァイも怒るに決まってるとハンジはリヴァイの不機嫌さも理解した



しかしハンジもハルの性格を知っている一人だ。彼は性欲で女性を抱いたりはしない



舞踏会は貴族との大切な交流の場だ。相手に対してヘマは出来ないだろう



それにエルヴィンの従順なハルのことだ。きっとこの兵団について資金の話で持出たのかもしれない



「あ!ハンジ分隊長!!」



廊下を通ったモブリットがハンジに気づきこちらに来た



「あれ?まだ休憩の時間だろう」



モブリットはハンジの隣にハルが座っていることに気づきすぐに会釈をした



「朗報ですよ!研究費が上がったんです!これで前言ってた巨人の再生能力の研究できますよ!」



「ヒャッフゥー!!まじ!?それまじ!?」



「まじですよー!良かったですね!」



「やっべぇ!テンションあがる!エルヴィンにお礼言わないと!!」



「るっせぇな。」



ハルの隣でハンジが両手を上げ目を光らせながら席を立った



「あ!ハルも一緒に行くかい!?」



「いや、もうちょっとしてから行く。さっさと行け」



「そうか!じゃあおっさきー!!」



ハンジは席を離れエルヴィンの部屋に向かいながら、いつもならハルはすぐにエルヴィンの部屋に行ってたのになと思った



振り返ってハルを見てみると机に肘をついて窓の外を無表情に眺めていた



きっと彼なりにリヴァイのことを考えているんだろう。






 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ